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司法書士業務部門

遺言書のほか生命保険まで契約して、争族対策したのに!

相続対策を行っていたとしても、思わぬトラブルを発生させてしまうリスクがともないます。円満に相続を終わらせるためには、何に気を付ければよいのでしょうか?

CASE STUDY 実際の事例

加藤太郎(仮称)さんは、次の自筆証書遺言を遺して平成28年4月20日に亡くなりましたが、遺言書の作成に際して専門家には相談しませんでした。太郎さんは、妻の花子(仮称)さんが他界した後、長男夫婦と長年同居していましたが、晩年に病気で寝たきりとなった太郎さんを、献身的に在宅介護してくれた長男夫婦の労をねぎらうため、すべての財産を長男の一郎(仮称)さんに相続させようと考えました。

太郎さんは、次男の二郎(仮称)さんと長女の美咲(仮称)さんが、太郎さんの介護に非協力的で晩年疎遠となっていたため、争族トラブルを避けるため遺言書を作成するとともに、次男および長女をそれぞれ受取人とする生命保険に加入しました。次男および長女にそれぞれ法定相続分に相当する1,500万円の死亡保険金を支払うことで、円満に遺産承継ができると確信していました。

太郎さんの遺産の総額は、預貯金1,000万円を含め4,500万円でした。長男の一郎さんは、遺言書により太郎さんのすべての遺産を相続し、土地・建物の名義変更も無事完了しました。次男の二郎さんと長女の美咲さんも死亡保険金を受け取り、長男の一郎さんは、これで遺産承継は円満に完了したと思っていました。ところがある日突然、次男の二郎さんと長女の美咲さんから、「遺留分を侵害している」との理由で、それぞれ750万円の支払いを求める内容証明郵便が送られて来ました。二人は死亡保険金を1,500万円ずつ受け取っており、この金額は法定相続分に相当します。一郎さんはどうしても納得できないため、知り合いの法律専門家に相談したところ、「原則として支払う必要がある」と言われました。どうしてなのでしょうか?

CASE STUDY

SOLUTION 当事務所による解決

次男の二郎さんと長女の美咲さんが受け取った死亡保険金は、その保険料を太郎さんが生前に支払っており、その対価として保険金が支払われるものですから、亡き太郎さんの「相続財産」に含まれるように思えます。しかし、この点について裁判所は、死亡保険金の保険会社に対する支払い請求権は、その受取人固有の財産である(亡き太郎さんの相続財産ではない)と判断しています(最高裁昭和40年2月2日判決)。

また、法定相続人(亡くなった方の兄弟姉妹が相続人となる場合の、その兄弟姉妹を除く)には、遺言によっても侵し得ない「遺留分」という最低限度の遺産に対する取り分が確保されています(民法1028条)。遺留分を侵害している遺言は無効ではありませんが、遺留分を侵害された遺留分権利者(この場合、次男の二郎さんと長女の美咲さん)は、長男の一郎さんに対して遺留分に相当する金銭を請求する権利があります。

つまり、次男の二郎さんと長女の美咲さんは、法定相続分に相当する死亡保険金を受け取っているにもかかわらず、その保険金は亡き太郎さんの相続財産ではないとの理由で、遺言によってすべての遺産を相続した長男の一郎さんに、別途遺留分として、それぞれ750万円(亡き太郎さんの遺産の6分の1)の支払いを主張できることとなります。後日、長男の一郎さんは、亡き太郎さんから相続した預貯金1,000万円では足らないため、やむなく自分名義の預金を500万円を取り崩して、次男の二郎さんと長女の美咲さんにそれぞれ750万円を支払うこととなりましたが、その言い分に未だ納得できていません。

POINT 気をつけたいポイント

  • それでは、太郎さんの争族対策を検証してみましょう。遺言書は全文が自署され、作成年月日が明らかで署名押印もされており、民法に定められた自筆証書遺言の要件を満たしています。さらに争族対策として、次男の二郎さんと長女の美咲さんをそれぞれ受取人とする生命保険にも加入していました。しかし、結果として長男の一郎さんは、次男および長女から遺留分に相当する合計1,500万円の支払い請求に応じなければいけないこととなってしまいました。太郎さんは、何を間違えてしまったのでしょうか?

    太郎さんは、生命保険契約の際に、死亡保険金の受取人の指定を間違えてしまいました。死亡保険金の受取人を長男の一郎さん一人だけにしておけば良かったのです。こうしておけば、次男の二郎さんと長女の美咲さんから、それぞれ遺留分に相当する750万円を請求されたとしても、一郎さんは自分名義の預金を取り崩すことなく、受け取った死亡保険金3,000万円で余裕をもってまかなうことができたのです。

    このように争族対策として生命保険に加入しても、死亡保険金の受取人の指定を間違ってしまうと、太郎さんの感謝の気持ちを実現できないばかりか、お世話になった一郎さんにも多大な迷惑をかける結果となってしまいます。もし、自筆の遺言書を作成する際に、当法人にご相談いただいていれば、各種専門家との連携により、こうした重大なトラブルを未然に防ぐことができたと考えられます。

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