CASE 解決事例

司法書士業務部門

役に立たなかった自筆証書遺言

効力のある「自筆証書遺言」を作成するには、どうしたらよいのでしょうか?ケーススタディでお教えします。

CASE STUDY 実際の事例

山田太郎(仮称)さんは、次の自筆証書遺言を遺して亡くなりました。作成に際して専門家に相談はしませんでした。遺言者の妻・山田花子(仮称)さんや子どもの伊藤幸子(仮称)さん、加藤直美(仮称)さんは、自筆で書かれたこの遺言書を発見し、家庭裁判所で検認の手続きを終えました。その際、家庭裁判所から何の不備も伝えられませんでした。

妻・山田花子さんは、この遺言書を持参して自宅の土地・建物の相続登記を知り合いの司法書士に依頼しました。ところが、その司法書士からこの記載内容では、登記手続きができないと言われました。どうしてなのでしょうか?

CASE STUDY

SOLUTION 当事務所による解決

遺言者の最終意思、真意を尊重し、遺言書の偽造、変造を防止するために、民法は自筆証書遺言に厳格な要件を定めています。その要件として、遺言の全文、日付を自署し署名捺印することが挙げられます。パソコンや、ワープロ、タイプライターによって作成することや、他人に代筆させることはできません。なお、民法が改正され、令和1年1月13日からは、財産目録についてはパソコンなどで作って添付できることになり、要件が緩和されました。

日付の記載方法としては、年月日を明らかにする必要があります。遺言の成立の日が確定できれば問題ないので、「平成28年の私の誕生日」、「還暦の日」などの記載でもかまいません。しかし、「平成28年4月吉日」という記載は日付の特定を欠くものとして無効と解されています。

署名は、過去の判例上通称、ペンネーム、雅号でも有効とされていますが、要らぬ紛争を回避するためには、戸籍上の氏名を正確に記載するのが望ましいといえます。押印は認印でかまいません。判例上は指印でも有効とされています。しかし、指印では誰のものであるか疑義がでる可能性がありますので、後の紛争を予防する観点から、実印を使用するのが望ましいと考えられます。

相続または遺贈する財産の特定については、登記された不動産の場合には登記事項証明書(いわゆる登記簿謄本)の表示のとおり記載することが望ましいと考えられます。なお、筆記用具については、保存および変造防止を考えると、鉛筆ではなくボールペン、万年筆などが望ましいと考えられます。

ところで、自筆証書遺言の保管者または遺言書を発見した相続人は、相続の開始(遺言者の死亡)を知った後、遅滞なく家庭裁判所に提出して検認の請求をする必要があります。遺言書の検認は、遺言の有効・無効の判断をするものではなく、検認前の遺言執行も、検認がなかったことをもって無効にされることはありません。ただし、検認のない自筆証書遺言を、相続を証する書面として添付した所有権移転登記の申請は、却下事由に該当して受け付けてもらえないため、注意を要します。

【山田太郎さんの遺言書の検証】
それでは、山田太郎さんの遺した遺言書を検証してみましょう。全文が自署され、作成年月日が明らかで署名押印もされている遺言書です。これは、民法に定められた要件を満足しています。また、家庭裁判所の検認手続きも問題なく終わっています。

では、なぜ司法書士はこの遺言書では登記手続きができないと言ったのでしょうか。遺言書をよく見てみると「自宅の土地・建物」と書かれています。遺言者の自宅は、その家族であれば所在地番は明らかなので、その記載に違和感はないと思います。ところが、法務局の登記官としては具体的に記載されていないと、登記手続きをする物件を特定することができません。また、建物を町名、街区符号、住居番号で表記した住居表示(例えば名古屋市名東区○○一丁目□□番△△号)で記載されている場合にも、地番が特定できないため登記手続きができません。

POINT 気をつけたいポイント

  • このように民法に定められた要件を満足した有効な遺言書であっても、物件の特定に不備があると、遺言者の思いを実現できない結果となってしまうのです。自筆の遺言書を作成する際に、専門家にご相談いただいていれば、こうしたトラブルを未然に防ぐことができたのです。
  • 民法等の改正により、自筆証書遺言の要件が緩和され、また法務局で保管してくれる制度が創設されるなど、利用しやすくなりました。緩和された「自筆証書遺言」については、こちらの記事で詳しく解説しています。

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